逃げ遅れの心理「正常性バイアス」とは?

正常性バイアスとは?

「正常性バイアス」とは、心理学の用語です。

社会心理学や災害心理学だけでなく、医療用語としても使われます。

予期しない事態が起きたとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、
物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)です。

何か起こるたびにいちいち反応していると精神的に疲れてしまうので、
脳は自動的にストレスを回避し、心の平安を守る作用が備わっています。

ところが、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、
脳の防御作用(正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、生命の危険にさらされる状況を招きかねないのです。

新型コロナウイルスで外出自粛を呼びかけられても、

「周りにかかった人がいないから大丈夫だろう」

「これまで外出していたけどかかっていないから、自分はかからない気がする」

と、根拠なく安全と判断してしまうのも、この正常性バイアスがあるからです。

逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ

東日本大震災では、たくさんの人が
「大地震の混乱で、すぐに避難できなかった」
「巨大な津波が来るとは思わなかった」と語っていました。

大津波が到達した地域には、巨大な防潮堤が設置されていました。

また、10m超の津波を経験した人がいなかったなどの様々な要因があり、迅速な避難行動が取れなかったことも事実です。

緊急事態下で的確な行動を取れるか否かの明暗を分けうる「正常性バイアス」の働きを、過去の災害の教訓として、私たちは理解しておきたいものです。

また、7月の熱海市伊豆山の土砂災害にも同じような心理が働いていた可能性があります。

現場から近い熱海市網代では観測史上で最多となる48時間で321mmの降水量を記録していました。

記録的な大雨による土砂崩れが発生し、近くの家が流されているにもかかわらず

「大丈夫だろう」と撮影していたため、避難が遅れた人も少なくないといわれています。

災害の報道をテレビで見ている人は冷静なので、
「撮影している時間があれば逃げられたのでは?」と考えがちですが、

災害に直面した当事者にしかわからない「正常性バイアス」は人々の行動を制限します。

そのため過去の事例からも、地震、洪水、火災などに直面した際、

自分の身を守るために迅速に行動できる人は、とても少ないことが明らかになっています。

ほとんどの人が緊急時に茫然と立ち尽くす

それでは、いざというとき、私たちはいったいどうしたらいいのでしょうか。

突発的な災害や事故に遭った場合、とっさに判断できず茫然と立ち尽くしてしまう人がほとんどと言われています。

緊急地震速報のアラートが鳴っても、すぐに避難態勢を取れる方はどれくらいいるでしょうか?

 「この前も大した揺れではなかったから、今回も大した揺れではないだろう」と考えて、

すぐに身を守る行動を取っていないのだとしたら、それも正常性バイアスのはたらきです。

こういうときこそ必要なのが、落ち着いて行動することです。

そのために有効なのが訓練です。

訓練を重ねることで、いざというとき、自然にいつもと同じ行動をとることができる。

つまり、訓練と同じ行動をとることで身を守れる、というわけです。

非常事態の際に「正常性バイアス」に脳を支配されないよう、
本当に危険なのか、何をしたらいいかを見極める判断力を養っておきましょう。

おまけ

私の通う中学校でぼや騒ぎがありました。
原因は理科の実験でアルコールランプを倒してしまい火が出た!ということだったようです。
幸いにも、すぐ消火できて生徒が校庭まで逃げることはありませんでした。
ただ、その授業に出ていた子からは
「火が出て周りがパニックになり、怖くて動けなかった」と聞きました。

当事者にしかわからない「正常性バイアス」が働いていたのです。
学校で何度も避難訓練をしていても、とっさには動けないものです。

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