人は眠ることで脳の老廃物を除去している?!

人間は1日6~8時間くらい眠ります。

人生の約3分の1は眠って過ごすことになるのですが、なぜ私たちは眠るのでしょうか?

人間の眠りとは「体の休息」と「脳の休息」を行っている状態と言えますが、
脳を持たない無脊椎動物や原始的な微生物、植物でも昼夜の変動に対応して活動と休息のリズムがあります。

食料の少なくなる冬に冬眠する動物は多くいますし、ある種の細菌は周囲の栄養や温度などの環境状況が悪くなると代謝活動を落とし休眠状態に入ります。

つまり、生物は活動性を低下させた方が得な場合に、眠るという手段を使い効率的に活動しているように思われます。

動物の睡眠について

昼行性と夜行性、一日に何度か休息状態をとる生き物など様々ですが、
大型の肉食動物は長く深く眠り、小型の草食動物は短く浅く眠ります。

肉食動物はカロリーの高いたんぱく質を食べているうえに、他の動物から襲われる危険が少ないため、長時間の睡眠が可能です。

一方、草食動物の場合、肉よりも栄養価の低い草を大量に食べるため、食事に多くの時間を費やします。

また、他の動物から襲われる危険性もあるということもあり、比較的睡眠時間が短くなっています。

同じ動物でも、動物園のような安全な環境にいると、睡眠時間は長くなるといわれています。

レム睡眠とノンレム睡眠

哺乳類の睡眠は、体を休めるレム睡眠と脳を休めるノンレム睡眠に大別されます。

ノンレム睡眠は脳波に遅い周波数成分が多くなることが特徴です。

一方レム睡眠は覚醒時(起きている状態)に似た速い周波数成分の脳波を示し、
速い目の動きが起こることやはっきりとした夢を見ることが特徴です。

人間は眠りにつくとまず浅いノンレム睡眠に入り、それが時間とともに深まります。

1時間ほどたつと眠りが浅くなり始め、その後レム睡眠に入ります。

レム睡眠が10~20分ほど続いた後、再び浅いノンレム睡眠に入ります。

こうしたサイクルを一晩で5回ぐらい繰り返します。

昔は「意識が消失する」という主観的な経験から、睡眠中には脳活動が著しく低下すると信じられていました。

しかし、近年の脳代謝活動測定技術の飛躍的な進歩により、これが迷信であることがわかってきました。

人間では、深いノンレム睡眠中でさえ脳の血流は覚醒時の8割程度に保たれ、レム睡眠時には覚醒時とほとんど変わりません。

レム睡眠の特徴であるはっきりとした夢見は、この時期の高い脳活動の反映なのかもしれません。

最近、頭部に弱い電流をゆっくりとした周波数で流し、深いノンレム睡眠を人工的に増やすと睡眠前に学習したことをよく覚えるようになることや、
レム睡眠量と運動技能の向上とが相関することが明らかになってきました。

眠ることには、単なる休息というより、もっと能動的な機能もあるようです。

脳の老廃物除去システム

人の体内には、細胞に栄養を運んだり、細胞から排出された老廃物を運び出して処理するリンパ系があり、脳内にもこれによく似た働きがあります。

脳と脊髄には無色透明の脳脊髄液とよばれる液体が循環しており、
それは脳と脊髄の血管周囲に沿って移動しながら栄養分を分配し、老廃物を取り除いています。

睡眠中には、脳内のグリア細胞の一種であるアストロサイトが縮んで隙間をつくり、
その隙間が脳脊髄液の排水溝のような役割をしています。

これがリンパ系のように脳内老廃物を効率よく運び出すことから、
グリア細胞とリンパ系をかけ合わせ、「グリンパティック・システム」と呼ばれています。

睡眠不足だったり睡眠の質が低かったりする人ほど、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ濃度が高いという報告があり、
睡眠と老廃物除去には関連があると疑われていました。

近年の研究で深い睡眠であるノンレム睡眠状態において、
老廃物除去システムが最も効率的に働くことが明らかになりました。

睡眠の質を改善させることで、脳の清掃機能を向上させられるかもしれません。

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